視覚障害があるからこそ、できることがある。“Blind Power”を応用した2つのソリューション、“moom”と”heart”。

ヴィアンカが提示する”Valuable Design プロセス”を用いて音と位置で、情報を管理する “moomと、景色や日常を、音から想像するSNS “heart”をデザインしました。2つのソリューションは、”Blind Power”のコンセプトのもと、世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)に出展。

blind-powerイメージ

音と位置で、情報を管理する “moom"

moomは、仮想の「メモ空間」をつくり、まるで部屋にモノを配置する感覚で情報を管理できるツールです。ふだん私たちは膨大な情報をメモなどで保存していますが、そのメモを見返す機会がなく、結局忘れ去ってしまうことはありませんか。わたしたちのチームメンバーである視覚障害を持つ松村は、すべての情報をメモして残すことができないため、頭のなかに擬似的な部屋をつくり、モノを配置するように記憶しています。彼の記憶法から、さまざまな情報を仮想の部屋のような空間で感覚的に管理することができるアプリをデザインしました。

moom利用時シーン

松村は、打ち合わせなどでの情報を管理する方法を次のように語ります。「自分の目の前にまっさらなキャンパスを作っておいて、そこに情報をプロットしておく。誰かが言ったことを、例えば左上に置いておこうとか、次の人が言ったことはちょっと近いので、右上に仮置きしておこうかな、とか」。また、この記憶法は打ち合わせの時などだけではなく、日常生活においても活用しています。例えば「何のおにぎりを食べようか」というとき。「梅と明太子は近くにおいておいて、銀シャリはちょっと違うな。おかかは割と右のほうかな。炒飯は後ろ。今日の気分は梅・明太子ゾーンかな」、などといった使い方です。


veernca松村ポートレート

仮想の部屋のような空間では、音楽や名言など、さまざまな情報をその情報のコンテキストに合わせた場所に配置することができます。部屋は情報の種別に応じて複数種類作成することが可能で、それぞれの部屋に情報をコンテキストを含んだ形で登録すると、自動的に情報が仮想的な部屋に配置されます。


画面イメージ

以上のコンセプトをまとめたムービーがありますので、ぜひご覧ください。

音から想像するSNS “heart”

heartは、想像を楽しむための日常音の投稿・共有SNSです。現代では、写真を用いたさまざまなコミュニケーションツールによって相手の日常や興味を知ることができますが、そこに想像力は生まれず、ただ相手が見せたい姿を見るだけです。heartは視覚障害のあるメンバーの、SNSの使い方を参考に開発されました。これはいわば「音の写真」。たった5秒や10秒の音によって、相手の見ている景色や気持ちを想像することができます。投稿にはフォロワーからの「いいね音」がついて、さらにすてきな音を奏でます。


heart利用時シーン

Twitter、Facebook、Instagram。挙げはじめるときりがないほど、現代では数多くSNSが存在しています。


SNS利用イメージ

私たちヴィアンカは、視覚障害がある人・ない人が楽しめるSNSの構築を目指して、音だけのSNSのプロトタイピングを行いました。その結果感じたのは、音から想像される人の温もり。考えてみると、人は、さまざまな音とともに生活しています。しかし視覚情報に頼って生活していると、いつのまにか聞き逃している音もあるのではないでしょうか。
目を閉じて、耳を澄ましてみてください。雨の音、誰かが歩く音、いつもの日常が、とても愛しいものに思えてくるはずです。 あなたの大切な人は、いまどんな音を聞いて、どんな景色を見て、どんな気持ちでいるでしょうか。 また、何かを包丁らしきもので切っている音がしたとします。その音は、食材を切っている音でしょうか。高級レストランの厨房かもしれないし、アパートで恋人のために朝ごはんをつくっている音かもしれません。 誰もが、落ち込んだり喜んだりしながら、発見や感動のある日々を生きています。音によって、そんな誰かの愛おしい日々を想像することができるのです。


以上のコンセプトをまとめたムービーがありますので、ぜひご覧ください。

“moom”と”heart”を生み出したデザインプロセス"Valuable Design Process"

障害の有無の関係なく、チームとして運営を続けてきたveerncaは、ワークショップやソリューションをデザインする過程をデザインプロセスとしてまとめ、”Valuable Design Process”として体系化しました。(Valuable Designの詳細はこちら)このValuable Designを用いて、moomとheartをデザインしました。

潜在的な力を顕在化し、新しい価値をつくるデザインプロセス”Valuable Design Process”。ぜひ、veerncaと一緒にValuable Design Processを用いて、新しい価値を持つソリューションをつくっていきましょう。